上級者編として取り上げるにふさわしい質問なのですが、非常に難しい質問でもあります。難しい理由として、まずドイツ・ウィーンで異なること。また、個人の考えや好みで意見が分かれる点です。 私自身はウィーンで勉強してきましたので、ウィーンで実際にはどのように使い分けられているかをご説明したいと思います。ドイツでは伝統的にB管のみという考え方の奏者も多いですが、それではこの質問の答えになりませんので、ご理解いただきたいと思います。
まず、ウィーンのTp奏者がオーケストラの中で使っている楽器はC管です。逆に言えばどのようなときにB管を使うかをお話した方が早いと思います。私の留学時代にB管で必ず演奏するように義務付けられたのは、まずエチュード・メソード。これは上級者の皆さんにはご理解いただけると思います。
ではオーケストラの中でどのように使い分けるのでしょうか?
以前にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団元首席奏者のW.Singer氏にお聞きしたところ、C管で出ない実音の下のF,Eそしてカルメンの前奏曲で出てくる下のEsなどはB管で演奏するがそれ以外はほとんどC管だけで演奏すると仰っていました。私から『さまよえるオランダ人』の2ndに出てくる実音のFisもC管で演奏しますかと尋ねたところ、Singer氏はC管で演奏するとの答えでした。
実際にB管で演奏する箇所と指定されたところ挙げてみたいと思います。
@ レオノーレ序曲 2,3番に出てくるバンダのファンファーレ
A オペラ『カルメン』 の舞台上で吹くA-durのファンファーレ
B 交響詩『英雄の生涯』 in Es の1,2番
C オペラ『ドン・パスクワーレ』より第2幕 第3場 ソロ
D オペラ『仮面舞踏会』より第3幕 in E のソロ
E オペラ『リゴレット』より冒頭の in C のソロ
このほかにも非常に細かい箇所があるのですがそれはあまり上演される機会が日本ではない曲なのでここではあえて挙げません。また、上記の曲でもBなどは、B・C管を持ち替えて吹くウィーン・フィル奏者もいますから厳密なものではありません。前に述べましたが、最低音がF,E,Esがある曲は上の@〜Eには載せていません。
日本のプロのプレイヤーも比較的C管を良く使いますから、ウィーンの扱い方と似ているように思います。このように例を挙げましたが、あくまでも自分にとって一番安定して演奏できる楽器を曲に応じて選択することが大事です。演奏している環境によってピッチなどもそれぞれ微妙に違うわけですから、柔軟に楽器の選択をしていただきたいと思います。
B管、C管どちらがよいかわからない曲が具体的にありましたら、メールにてご連絡下さい。
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