今まで一番多く頂いたご質問がマウスピースに関するものでした。当店でも2005年2月の訪欧により多くの情報や、マウスピースが集まりましたのでロータリートランペット用のマウスピース選びについてご説明したいと思います。
当店が扱っているマウスピースは今現在(2023年11月)6社です。各社それぞれ特徴がありますからまずその特徴についてご説明します。
@ Breslmair 当店が一番バリエーションを揃えているメーカーで一体型と3パーツタイプのものがある。一体型のものは G1,G2,G3を代表とするマウスピースで近年は、新モデル・バリエーションが増えてきている。3パーツタイプは、文字通り3パーツ(リム、カップ、スロート)に分かれ、様々な状況(例えば、B管、C管によってスロートだけを変えて音程や吹奏感を良くする等)に対応しやすい。
A W.Chr.Schmidt 旧東ドイツにあってロータリートランペット用のマウスピースを中心に何代にもわたって作り続けているメーカー。SolistモデルとGermanyMasterモデルの2種類を当店では取り扱っている。他にFAHモデル(Heckel用のマウスピース)もあるが当店では今現在取り扱っていない。GermanyMasterモデルは日本人になじみの深いBach社のマウスピースのリムを基本として作られており、ピストントランペットの持ち替えが多い方には使いやすい。
B Schantl 日本では残念ながらまだ無名のメーカー。オーストリア、シュタイヤーマルクト州にあり一体型とBreslmairの3パーツタイプのリムを選択できる2種類がある。私自身が使っているお薦めのメーカー。
C Lechner ピッコロトランペット用のものを当店では紹介している。B,C管用などはLechner本人はBreslmairを薦めているためにLechnerオリジナルのマウスピースはピッコロ用の1種類のみ。
D Ankerl ウィーンに工房を構え、ウィンナホルンで有名。昔から金管楽器の修理や改造などを中心に現在まで幅広く対応している。AnkerlオリジナルのマウスピースはModell
Prof.Hollerのみだが、往年のHeckel,WindischなどのDresdenタイプの楽器に是非、試していただきたいマウスピース。予約製作でのみ対応しているため非常に数が少ない。
※ 生産終了
E Egger 現在、ナチュラルトランペット、長管トランペット用のマウスピースを主に製作している。19世紀に作られたマウスピースのコピーなども特注で行っている。
F Brass Lab.MOMO 2021年春からJRTCオリジナルモデルとして、ピストントランペットと持ち替えがしやすいようにBach 1 1/2C のカップとスロートをベースにして、バックボアとシャンクをロータリートランペット用に調整したモデルを共同開発しました。ロータリートランペット専用マウスピースが苦手な方は是非試して頂きたいマウスピースです。
実際のマウスピース選びについてですが、まずリムは通常使っているマウスピースのリムと同じもしくは口に当てて違和感のないものを選択します。出来る限りサイズが同じなものが良く、大きすぎるものや小さすぎるものは調子を崩す原因になります。
気をつけなければいけないことがあります。各社マウスピースのカタログにはサイズが記されていますが、この数値は各社がそれぞれ独自に計測したもので他社の数値と比較することができません。当店で日本語訳したカタログの数値も各社が発表している数値そのままを記載していますからできれば、Bach社のマウスピースとの比較を参考にしてみてください。
リムが決まったらお持ちの楽器に合わせてカップ、バックボアを選んでいきます。当店で扱っている楽器との相性を例として上げておきます。
メーカー |
カップ |
バックボア |
その他 |
Weber C管 |
Breslmair 3パーツタイプ
ST、G2 |
ST,1,W1 |
Schantl T7E,T7G
Breslmair Modell Weber Brass Lab.MOMO
1 1/2C-26-W他 |
Weber B管 |
Breslmair 3パーツタイプ
ST、G2 |
ST,1 |
Schantl T6E,T6G,T4E,T4G Brass Lab.MOMO
1 1/2C-26-W他 |
Lechner C管 |
Breslmair
G2、G2L、G2H |
W1,1,2,G |
Schantl T7E,T7G,T5E,T5G
Breslmair Modell Lechner
Brass Lab.MOMO
1 1/2C-26-W他 |
Lechner B管 |
Breslmair
G1,G2 |
1,2 |
Breslmair Modell Lechner
Schantl T4E,T4G Brass Lab.MOMO
1 1/2C-26-W他 |
Schagerl B,C管 |
Breslmair
GE48,G1,G2 |
W1,1,2
(2008年以降の
新モデルより
ショートシャンク) |
Breslmair Modell Schagerl
Schagerl Austria G2
Schagerl Apredato
Mod.Hans Gansch Brass Lab.MOMO
1 1/2C-26-D他 |
Kühn B,C管 |
Breslmair G1,G2
Schmidt GermanyMaster |
2,3,S,B
(ショートシャンク) |
Breslmair Modell Kühn
Brass Lab.MOMO
1 1/2C-26-D |
Willenberg
Es/D管 |
Breslmair
G2A,G3W |
スロート W1,1(Es管)
2,G,3(D管)
(ショートシャンク)
|
Breslmair Modell Willenberg Brass Lab.MOMO
1 1/2C-26-D |
Willenberg
B,C管 |
Breslmair G2,G2A,G3
Schmidt GermanyMaster
---C(168C,170Cなど) |
2,G,3,P
(ショートシャンク) |
Breslmair Modell Willenberg Brass Lab.MOMO
1 1/2C-26-D |
※ 2022年1月改訂
上記はあくまでも参考例として選択肢です。。楽器の個体差や奏者の好みで変化するのは当たり前ですから実際に試すことが大切です。私個人の意見ではありますが、音程が良いもの、取りやすいものを選ぶべきです。チェックしなければいけない音程は開放での音程バランスです。
@ 真ん中のソが低いもの
A 下のドが不安定なもの
B 真ん中のドが高いもの
C 5線第4間のミが極端に低いもの
以上の4項目で問題が無いものを選択します。その他の音程が良いものを選ぶのも当然のことですが、すべての音程が良い楽器、マウスピースは無いものと考えてください。楽器も人間が作っていますから完璧なものはありません。
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